セラミックの匠~白いかぶせ物は「いい治療」の手段です

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「銀歯じゃなくて、白いかぶせ物にした方がいいのは分かったけど、誰の言っていることを信じればいいのか?」「白いかぶせ物に登場する、『ジルコニア』やら『セラミック』の違いは、何???」

ネットの情報は玉石混合、一体何を信じたらいいか分からないという方、多いのではないでしょうか?

そんな疑問を解消すべく、一母親でもある歯科ライター(娘がかぶせ物をどうしようか検討中)が、白いかぶせ物・詰め物について先生に率直に質問しました!

目次

一目瞭然!「セラミック」と「ジルコニア」の違い
ジルコニアにしたのに歯ぐきが腫れる?においがする?
ジルコニアは「削り出す」、セラミックは「型を作って流し込む」
ポイントは「光の透過性」
ただ「白ければいい」というものではない
かぶせ物の出来を左右するのは○○
「いい治療」とは何か?

娘が白いかぶせ物にするのですが、どうしようか悩んでいます。先生が分かりやすい資料をお持ちと聞いたのですが。

はい、セラミックとジルコニアの違いが一目瞭然な資料を作りました!

おお、確かに!「白い詰め物・かぶせ物」によくでてくる「ジルコニア」と「セラミック」ですが、こんなに違うのですね!その訳は、色が違うから?

たまたま、この患者様は治療をしていない歯(天然歯)と様々な治療をしている歯が並んでいて、天然歯、金属(銀歯)、ジルコニア、セラミック、と並びまして。

完全にお品書きですね。(笑)

(笑)そうですね。それぞれの治療について説明すると...。

目の前の先生に解説してもらうと、説得力あります!自費の歯とかぶせ物をくっつけるセメントについても分かって、スッキリしました!ちなみに、前歯でも同じことが言えるのでしょうか?

同じことが言えますが、前歯の治療に関しては治療する歯が1本なのか多数なのかによって変わります。
1本のみの治療ですと、周りの歯の色調や形態と調和を取ることが必要になってくるので細かい加工がし易い「セラミック」がお勧めです。

多数の歯の治療(例えば、前歯6本まとめての治療など)においては、かぶせ物全体で色調や形態の調和が取れやすいので「ジルコニア」がお勧めです。

次の写真を見てもらいたいのですが、左がジルコニアで作った前歯、右がセラミックで作った時の前歯です。

右のセラミックの方が自然・・・。

セラミックの方が自然ですよね。

ジルコニアとセラミックつの作り方の違い

言葉の意味が分かると、安心できます!セラミックは、最後に歯の表面に筆で書くと聞いたことがありますが・・・。

それぞれおいくらですか?

かぶせ物ですと、ジルコニアが8万円(税抜き)、セラミックが12万円(税抜き)ですね。
奥歯の詰め物に関しては、歯の種類によって金額が変わるので料金表を参照していただくか、担当医までお尋ねくださるとわかり易いかと思います。

→料金表はこちら

審美的な治療を希望される方でこの画像をお見せして説明すると、ほとんどの方がセラミックをご希望されますね、特に前歯は。

それはそうです。

ジルコニアからセラミックに替えたのですね?

そうです、私が替えました。ジルコニアの時のこの方の歯ぐき、よく見ると腫れています。

(よく見る)確かに、それはどうしてですか?

うちの母の前も、かぶせ物と歯ぐきの境目が浮いています・・・そこをパチっと合わせることが大事なのですね。

におい・・・残っている歯とかぶせ物の間に、食べカスが入って汚れているということですか?

そうです。
このジルコニアのかぶせ物はパッと見はキレイですけれど、かぶせ物と歯の境目を探針(たんしん:歯周病の検査などで使う小さい針。下記写真参照)で触ると「カチッ」と段差がありかぶせ物と歯が移行的になっていない状態でした。
その段差がある事で、汚れが溜まり、においも出る…。


→「いい治療」とは何か?

そういう細かいところも大事なのですね。先生が歯を削るのですよね。

そうです、私がやります。

先生、形成はこだわる?

こだわります。

ちなみに、形成とは何ですか?

かぶせ物を支える歯を削って形を整えることです。

仮歯をキレイに作りすぎて、満足して患者様が治療を途中で辞めてしまうくらいのクオリティの仮歯、という先生ですね?

そうですね。でも、分かる人は仮歯と分かりますよ(笑)。

ジルコニアとセラミックは、大体一緒ですと仰る先生もいますが、一緒ですか?

ちなみにセラミックのかぶせ物は、どうやって作るんですか?

セラミックは型取りして作った模型にワックスで歯を作り、そのワックスから最終的な歯の型を作りそこにセラミックを流し込んで作製をします。(ジルコニアと同じように削り出して作る場合もあります)

ジルコニアのように「削り出す」のではなく、セラミックは型を作って「流し込む」のですね・・・超大変じゃないですか?

セラミックをキレイに仕上げるためには、歯科技工士さんの技量も大きく関ります。
治療と一緒で、得意分野がセラミックである歯科技工士さんはやはり上手です。
セラミックとジルコニアの両方とも作製する過程で誤差が出やすい操作などが多くなれば、作るのも大変になります。

その様な視点で考えると、機械での操作が多いいジルコニアは誤差が出にくく安定はしていますが、人によって歯の特徴を付けたりするのは難しくはなります。
逆にセラミックは人による作業が多いので、色んな特徴などを付けていくことは可能になりますが、作製するのは手間がかかる分大変にはなります。

また、ジルコニアはセラミックに近い性質なども持っているのでジルコニアをセラミックの一種類と捉える人もいます。

だから一緒という先生もいるのですね。でも、こう見ると全然違う・・・。

ジルコニアにも松竹梅がある?

あります。先程も言った通り、各社で様々なジルコニアが出ているので当然松竹梅はありますよね。

セラミックにも松竹梅がある?

あります。どの様なセラミックを使用しているか気になったら、先生に聞いてみるのも良いと思います。

先生が訴えたいことは?

セラミックだと、見た目が明らかに変わる、歯の形態が本人の歯の様により自然な形に作製することができます。
また、しっかりと手順を行って作製すると歯ぐきの状態も変わってきます。

どんな治療でも言える事ですが、治療に対してどのような考えで行っているか?最終的なゴールをどの様に設定して、患者様と共有しているかが重要だと思います。

いかに「ぴったりフィットか?」ということですね?

はい。
「ぴったりフィットか?」ということと、削る人が「歯の形態を予測して削り仮歯を作製し、最終的に歯ぐきはどの様な状態になるか?」と想像して削っていないとならないです。

削る人とは先生、ですね?

はい。もちろんです。
芸能人の方もジルコニアを入れている方が多くみられるようになってきましたが「歯ぐきの状態が、結構やばいな」という方がたまにいらっしゃいます。

ただ「白ければいい」というものではないんですね。

「かぶせ物」と「歯ぐき」の間が移行的になっていないままだと、歯周病などのトラブルが出てきて、最終的には歯を抜かなければならなくなったり、歯ぐきが下がることで見た目にも悪くなったりします。

今まさに娘は治療中で、どうしようかと思っています。(汗)

こういうところは、私は今アピールしたいところです。
同じかぶせ物でもやる人でこれだけ違うし、金額を掛けるなら、なおさらちゃんとやった方がいいですよ、と。

「自費はちゃんとやるけど、保険だから出来ない」ということではなくて、治療として同じ技術の上に最終的なかぶせ物が自費の物なのか保険の物なのかということですね。

「一事が万事」、保険も自費も技術のベースは同じ、ということですね。

その通りです。
実は症例写真の写真をちゃんと撮るのにも、技術が必要です。
このように記録を残さなかったら、歯科医師は分かっているけど、患者様含めて他の方には何も伝わらないですよね。写真もピンボケしていたら何も意味ないので。

症例写真にも、こだわっていますか?

はい、こだわっています。
患者様ご自身の口の中は自分では見られません。
「こういう風に治療すると、こういう風になりますよ」と可視化することは、とても大事です。

もしかして、「口の中の写真の撮り方講座」のようなものがあるのですか?

ありますよ。
歯科医師・歯科衛生士向けに「口腔内写真の撮り方」の本やセミナーが結構あります。
セミナーを受けても、一朝一夕では撮れないですね。
患者様の口の大きさは個人個人で違いますし、歯の本数も違いますので、日々の積み重ねが本当に大切です。

私が使っているのは、この一眼レフです。

レンズの脇についているのは何ですか?

フラッシュです。
口腔内が暗いのでここが光ることで口腔内が明るく撮れます。
これがあるから、分かりやすい写真が撮れます。

なるほど。質問なのですが、歯とかぶせ物をくっつける「セメント」は保険と自費では違うから虫歯が再発(二次カリエス)しにくくなるという話を聞いたことがあります。本当ですか?

本当です。
金属をつけるセメントは、経年劣化して徐々に溶けだしてくるので、表面から見ると隙間がなくても、実際はセメントがなくなって隙間ができていることがあります。

ジルコニアやセラミック(自費)をつけるセメントは、劣化しない、溶けださないセメントです。
要は「隙間ができない=虫歯になりにくい」ということです。

かぶせ物の出来を左右するのは、材料か?ドクターの腕か?どっちですか?

簡単に言うと、全部です。
ドクター、材料、あとは歯科技工士さんも、です。
歯科技工士さんが「この先生はこういう風に削るから」と分かっていると、キレイに仕上がってきます。

先生と歯科技工士さんは「阿吽の呼吸」なんですね。

「何も言わなくてもこうなるよね」というのがあります。
私が仮歯を作ると、技工士さんから出来上がってくるものは同じようなものを作っていたりすることが多いです。
「この辺ここ気を付けているな」という見るべきポイントがだいたい同じです。
だから、歯科技工士さんが作っている仕上がりと自分が作った仮歯がほぼほぼ同じです。

仮歯は先生が作るのですね?

はい。治療時間との兼ね合いなどもありますが、基本的には自分で作ります。

同じことを考えている、ということですね。ご贔屓の歯科技工士さんがいる?

います、「これはこの人に任せよう」となります。

歯科技工士さんにもそれぞれの得意技がある?

あります、得意分野が分かれますね。
セラミックが得意な歯科技工士さんもいます。
今はCAD(キャド:詰め物の設計ができるパソコンのソフト)を使って設計する技工士さんが大分増えてきたと思います。
本当にちょっとした違いで全然違ってきますので、その塩梅をうまく出来る人に依頼します。

CADも手作業も、どちらもできる技工士さん、ということですね?

CADのAIも性能が上がってきているので、だんだん追いついている感じはあります。
ただ、技工士さんの手作業でやったものの方が明らかにきれいです。

手作業の技工物の表面を顕微鏡で見ると、機械だと線が残っていて手で作ったものと違うという話を聞いたことがあります。2023年8月現在で、一番先生のおすすめのパターンは?

一番いいのはセラミックです。
やっていてキレイだし、その後安定しているので。ただ、セラミックも歯にしっかり接着していないと、もろいのですぐ割れます。
ジルコニアを勧めるところが多いのは、割れないからです。

私は、レジンインレー(詰め物)のセメントは何がいいか?割れるか割れないか?などいろいろ試しました。
レジンは樹脂で出来ていてセラミックよりも耐久性は劣るので、レジンで割れにくかったらセラミックでは割れないだろうと…

そうしたらCAD(機械で削りだす詰め物・かぶせ物)が出てきて、以前からやっていたことが役に立ちました。
ちょうどいいタイミングで、ようやっと時代が追い付いてきた感じですね。(笑)

・・・写真大事ですね、どんなに言葉を尽くすより、論より証拠ですね。

はい、写真大事です。

セラミックかジルコニア、どっちがいいか悩んでいる人には朗報だと思います。

自費云々ではなくて、結果として「いい治療って何か?」を訴えたいです。

かぶせ物と歯ぐきの境目が違うのも分かりますよね。
先程の前歯をジルコニアからセラミックに替えた方は実は歯科衛生士なので、歯ブラシは丁寧に行いますし、フロスも毎回します。
そんな、セルフケアについて熟知している人ですら、歯ぐきが腫れてしまう場合もあります。

お金もちょっと頑張って貯めたそうです。
自分が歯科衛生士としてもう一歩上に行きたいときに、患者様にもジルコニアじゃなくてセラミックを見せられたらいいな、と思ったそうです。

「良い治療」は、こういう細かいところまでの仕事なのですね。

歯ブラシをしっかりして、デンタルフロスをしていても腫れる・・・その原因が「かぶせ物」な場合もある…。
普通に歯医者さん行ったら「ジルコニアを入れたら汚れが付きにくくて腫れないですよ」と勧められることもあるかと思いますが、結果として歯ぐきが腫れている人は結構いらっしゃいます。

腫れる原因がかぶせ物・・・患者様サイドからしたら、治した場所が原因で歯ぐきが腫れるのは本末転倒も甚だしいです。「こんな高いかぶせ物したのに何で?!」という気持ち、なんか騙された感じです。(笑)

長い目で見ることが超大事、ということですね。

10年経ったらどうなる、というのは結構大きな問題です。

完全に合わせることなんて出来るの?と素人の素朴な疑問ですが。

それくらい手間と時間を掛けてやっている・・・精密なことですよね。

片方だけを見たらそれぞれはとてもキレイに見えますが、両方を同時に見て比べるとそうではない。
実はジルコニアの方は、歯の形が細い・・・ストレートでふくらみが少ないです。
セラミックでは、そこを盛り上げて作って自然な形にしています。

この方は女性なので、歯にも全体的に丸みを出して・・・ストレートに作るよりも優しさが出ます。
そうすると笑った時の印象が柔らかくなります。
逆にストレートだと、機械的な感じの少し冷たい感じがするのでクールな印象となりやすいです。

歯の形を作るのに、人柄まで見るのですか?!

知らなかったです、ありがとうございました。では、詰め物やかぶせ物で悩んでいる方に一言お願います。

教えて先生!

今通っている歯医者さん以外で、かぶせ物だけひまわりデンタルクリニックでお願いすることは可能ですか?通っている歯医者さんは嫌がりませんか?

セカンドオピニオンは可能です。
先生によって得意な治療は違うと思いますし、何か疑問点などあれば遠慮せず聞いて欲しいです。
セカンドオピニオンをすることで治療の良さなどが分かってもらえると思うので、嫌とは思いません。

娘がこれからかぶせ物を入れます。通っている医院さんの技量を見極めるには、どうしたらいいですか?

どの先生も一定の技量は持っています。
しかし、得意分野なども違うので判断は難しいと思います。
一つの目安として、口腔内写真撮影をしっかりと行っているか、その写真を用いながら治療の説明をしてくれるかなどを気にしてみてください。
一つ、やってはいけないと思うことは「先生にお任せします。」という事。
ご自身の歯のことでもあり今後の健康にもつながる事なので他人任せにせず、しっかりとご自身の意見を言って先生とお話しすることが大事です!

編集後記

この業界に10年以上いますが、こんなに分かりやすい写真見たことありません。多くの医院さんの取材をしていますが、本当に相談したくなりました。 これからも駒込の患者様のために、ひとつよろしくお願いします!